懸濁剤・乳剤

 日局の製剤総則には,「懸濁剤及び乳剤は,通例,医薬品を液中に微細均等に懸濁又は乳化して製した液状の製剤である.」と定義され,また,

 

 「懸濁剤固形の医薬品に懸濁化剤又はそのほかの適当な添加剤と精製水又は油を加え,適当な方法で懸濁し,全質を均等にする.

 

 乳 剤:液状の医薬品に乳化剤と粘製水を加え,適当な方法で乳化し,仝質を均等にする.

 

 本剤には必要に応じて保存剤,安定剤などを加えることができる.変質しやすいものは用時調製するコと規定されている.

 

(1)懸濁剤(懸濁液剤)

 

 懸濁液剤は固形の医薬品を懸濁させた液剤である.内用液剤で取り扱われる懸濁液剤は振とう合剤の一種で,固形の医薬品が沈殿するのを防ぐため,適当な懸濁化剤を加えて比較的均一で安定にした液剤である.懸濁化剤としてカルメロースナトリウム(CMONa)またはメチルセルロニス(MC)が多く用いられる.また固形医薬品の粒子が比較的軽質の場合には単シロップ,グリセリンあるいはソルビトールも用いられる.

 

 CMC-NaおよびMCを使用する場合は,通常2~3%濃稠液を調製して使用する. CMC-Naの場合は,急速に研和し,均一に湿潤させた後,残余の水を徐々に加えて均等な溶液とするのがもっともよい.

 

 MCの場合は,これを濃樹液全量の水の1/3~1/2量の熱湯とよく混ぜた後,残部の冷水を加え,5~10でに冷却すれば澄明な濃樹液が得られる.

 

[処方] 硫酸バリウム

     CMC-Na

     サッカリンナトリウム

     レモンエッセンス

     精 製 水

Barium Sulfate

Sodium Saccharinate

Lemon Essence

Purified Water

          全量 350.0 mL

(適応:造影剤)

 

 この処方は硫酸バリウムとCMC-Naとをよく乾燥した後,乳鉢で研和しておき,これに残余の薬品を精製水に溶かした液をかき混ぜながら徐々に加えるとよい.

 

  [処方] ポリスチレンスルホン酸カルシウム

        Calcium Polystyrene Sulfonate         30 g

       D-・ソルビトール   D-Sorbitol        20 g

       アビセルRC591NF  Abicel RC591NF*       29

       5%エチルパラベン

        Ethylparaben Solution            l mL

       精 製 水      Purified Water 全量 100 mL

             (適応:高カリウム血症改善)

 

 この処方は精製水の一部に5%エチルパラベン液を溶解,混和し,I)-ソルビトールを加え,ミキサーでかくはん溶解後,懸濁化斉11であるアビセルRC591NFを加え,さらにポリスチレンスルホン酸カルシウムを添加,混和する.精製水で全量100mLとする.

 

 本製剤は,保存中にゲル化して固くなるので,「使用時よく振とうする」と表示する.わが国では,液剤は通常1日盛りまたは2日盛りさせる習慣があるが,最近では食匙(約15 mL),茶匙(約4 mL)一杯ずつ,または計量カップを用いるなどのように処方される例が多くなってきた.

 

  [処方] マーロックス   Maalox          80 mL

 

 胃粘膜保護を目的としたものは,水を加えて希釈しないほうがよいので,計量カップを添付する.

 

(2)乳 剤

 

 乳剤は氷に混和しない液状の医薬品を乳化した液剤である.内用液剤で取り扱われる乳剤は水中油型(o/w型)乳剤である.薬物が微小な液滴になっているので吸収がよく,また甘味や芳香を加えた分散媒を用いることによって除去できる利点がある.

 

 水に不溶な微粒子の均等な分散を図り,その安定性を保つためには適当な乳化剤を添加し,さらに二液相を激しくかき混ぜることが必要である.

 

 乳剤の調製には,乳鉢のほか,ホモジナイザー,コロイドミル,ミキサーなどが用いられる.最近は乳剤を調製する機会がほとんどなくなっている.

 

 乳化剤として,カルメロースナトリウム(CMC Na),メチルセルロース(MC)などが用いられている.

 

 また油と水との間の界面張力を低下させて乳化を促す界面活性剤がしばしば用いられる.それらのなかで内用液剤に用いられるものには, Tween 80 (ポリソルベート80), Span 60 (ソルビタンモノステアレー)などの非イオン性界面活性剤がある.