錠剤の調剤

 

 錠剤(カプセル剤を含めて)による調剤は,他の製剤と比べて簡便に行えるが,処方監査から始まって,注意事項を遵守した正確な調剤,調剤鑑査を経て,さらに交付時の服薬方法,適用方法など患者への十分な注意一指導を行わなければならないことに変わりはない.特に調剤される錠剤の種類が多い場合などは,患者に服薬過誤を誘発させないように,理解しやすい交付の方法をとるように努めなければならない.また同じ処方内容であっても調剤の方法や服薬の指示が交付毎に異なるようなことは,いたずらに児者に不安を与え,薬剤師と患者の信頼関係を損なうことにもなりかねないので避けねばならない.薬歴簿の作成は過去の投薬状況を確認することができ,このような事態を避けるためにも有用な謌剤行為である.

 

(1)処方せん監査

 

 近年,医薬品の品目数が増加するとともに,薬剤の品名が類似していたり,持続性錠剤など製剤設計を異にしたもので品名の語尾に-Rや-Lをつけた医薬品が増えている.処方せんを読むときには,これら類似薬剤名を誤認する危険性を十分考慮して調剤の正確性を期さなくてはならない.次に,処方薬剤が配合剤である場合は,含有薬物量の総量から処方薬剤の1日の分量あるいは用量が適切であるかどうかの判断をしなければならない.錠剤などの固形製剤では,投与量の調節ができるように同一の品名で2種類あるいはそれ以上の含有量が異なる製剤がある場合が多い.このような錠剤で処方せんに含有量が明示されていない場合は,照会して確かめた後でなければ調剤はできない.

 

 保険調剤では含有量の違いにより効能・効果が違う場合もあるので照会時にはこの点についても考慮する.また処方されている錠剤の分量が1日の服用回数で割り切れない場合もある.この場合は,処方医へ照会することが原則である.

 

 一般的に,錠剤が指示された用法に均等に分服できない場合の用法指示は,抗生物質などの化学療法剤,あるいは痛風,重症筋無力症などの治療薬では,なるべく血中濃度の維持を考慮して行われる.

 

それぞれの薬剤の特性による錠剤の分量配分方法を知っていることは,処方せん監査と服薬指導を行ううえできわめて重要である.

 

 嚥下能力のない乳幼児の場合には,錠剤による投与は避けることが好ましい.また,幼小児や高齢者の場合も錠剤を服用しにくい患者がいるので注意を要するがに介助者を必要とするような高齢者の場合は,散剤や顆粒剤よりも錠剤のほうが服用させやすい場合がある.生活の環境を含めて患者の状態についての情報を服薬指導時に少しでも多く収集することは,よりよい服薬状況をつくるための決め手ともなる.