徐放性(経口)製剤の評価

 現在,持続性錠剤に代表される徐放性(経口)製剤の開発は,厚生省によってまとめられたガイドラインによって進められる.徐放性製剤を製造するにあたって対象となる薬物については十分な調査をする必要があり,またその評価,投与時の問題について検討することとされている.患者サイドに立つ薬剤師にとっても,これらの検討は病院製剤の開発,あるいは徐放性製剤の理解と評価に役立ち,医師の薬物投与計画への情報提供,処方せん監査,あるいは服薬指導の貴重な情報を得るー一助となる.

 

(1)徐放化の際に検討を要する薬物特性

 O消失半減期:毒性発現の防止や投与量低減などを除いて,消失半減期

   の長い薬物の徐放化け好ましくない.

 ii)初回通過効果:初回通過効果の大きい薬物では放出,速度を遅くする

   と,バイオアベイラビリティが著しく低下するおそれがあるもの.

 iii)吸収部位:吸収部位が限定されている薬物では,通常の徐放化で吸収

   率が低下するおそれがあるもの.

 副作用:副作用への影響として次の検討を行うことが望ましい.①血

   中あるいは作用部位濃度と臨床効果との関連性,②薬物血中濃度維持

   による酵素誘導,阻害,薬効の変化,耐性あるいは依存性の発現,③

   蛋自結合性に関連した他の薬物との相互作用.

(2)徐放化の価値の評価

 O薬物の放出特性:消化管内で製剤に慟く機械的変動を考慮して,異な

   るpHおよびかくはん条件下での溶出試験によって検討される.

 勧薬物速度論的特性:血中濃度一時間曲線下面積,最高血中濃度,最低

   有効濃度維持時間などの比較のほか,食事および食事時問(空腹時,

   食後)などの影響を評価することが重要である.

 iii)臨床効果:徐敖性製剤が確実に機能を果たしているとしても,そのま

   ま臨床上の利点につながらないので,血中薬物濃度と薬理効果の関係

   を臨床的に明確にしておかなければならない.

 以上.,述べたような徐放性製剤の特性を評仙すると共にその有舒|生を検討することが求められる.その有舒ド|ミの判断基準としては次のようなことが考えられている.

 

 ①速放性製剤と比較するとき,最低有効血中濃度維持時間が少なくとも1.5

  倍以上に増大するか,または投与回数を2/3以下としても迪放性製剤と同

  等以上の薬効を示しているか.

 ②速放性製剤あるいは他の徐放性製剤と比較するとき,投与回数が同じで

  あっても,有意に副作用を減少させることができ,かつ対照製剤と[司等

  以上の薬効を小しているか.

 ③該当する速放性製剤がない場合には,原薬の水溶液または試作した速放

  性製剤を対照として当該製剤の放出特性,薬物速度論的特性等を検討し,

  上記①または②に準拠して判断する.

(3)徐放性製剤の投与指針

 

 徐放性製剤は通常の製剤に比べ,薬物の1回の投与量が多く,長時間にわたる吸収を設計しているため,過剰投与の場合や患者が製剤をかみ砕いてしまった時などの薬物の過量放出(Dose dumping)による重篤な副作用や,中毒の危険性があり,その場合の対処法をあらかじめ検討しておくことも大切である.