全国の病院にがん看護のスペシャリストを

 

 がん看護専門看護師は、2007年現在、全国に79人いる。専門看護師のなかでは、、がん看護が一番多いが、それでもすべての病院に配置されるにはまだまだ足りない。この数字でぽかん看護専門看護師のいる病院を探すのが難しいくらいだ。米国には200種類以上の専門看護師職があり、日本の医療現場は20~30年遅れていると言われる。

 

 専門看護師とはどんな仕事をするのか。専門看護師もふつうの看護師と同じように外来や病室で患者のケアをするが、さらに仕事の範囲が広く専門性が高い。たとえば、がん看護専門看護師には、

 

  • がん患者・家族の悩みや相談の対応

②患者や家族の倫理的な問題(たとえば、「治療を継続するか、中止するか」「患者には

どこまで真実を伝えていくか」「苫痛の強い患者に対する鎮静剤投与について」など)

と、それに対する葛藤の解決

③ チーム医療時のスタッフ間の意見調整

④看護師からの相談の対応

⑤看護師の教育

⑥がんの専門知識や看護技術に関する研究、という役割かおる。

 

 近藤さんは看護師の仕事のやりがいを「患者さんと少しずつ信頼関係を構築していくところですね」と言う。とくに、夜勤のとき、家族が帰ってしまったあとの時問を患者と共有することをとても大切にしている。さらに、がん看護専門看護師の資格を得てからは、「がんのスペシャリスト」として患者からのニーズや期待を感じるようになった。

 

 この什事で求められる資質についていう。

 

 「人生や医療の臨床現場で失敗するたびに立ち止まっていろいろ考えてきた人、そのたびに、気づきや疑問を持って生きてきた人は、この仕事に向いています。悩みやジレンマ、人との衝突を避ける必要はありません。その一つ一二が人間を成熟させるからです。成熟度は年齢ではなく、経験とそのときの考察力によってつくられると思います」

 

 スペシャリストになっても悩む。そんなとき近藤さんは、似たような体験を持つ人とつらさや苦さをわかちあう。一入で抱え込まず、声をあげると楽になるという。12歳の男児の母という顔も持つが毎日、すごく充実していると言い切る。

 

 がん看護専門看護師は患者と医師の間、病院内では人と人をつなぐ。悩む人がいれば「あなたは一人じゃない。一緒に考えよう」とサポートし、病院全体を活性化させる。

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円