医療コーディネーター

がんと診断され、その治療法や入院日まで決まったが「やっぱり、手術はイヤだ」「本当にこの方法でいいのか」など不安になることがある。あるいは、医師から「2種類の治療法かおりますが、どちらを希望されますか」などと、患者に治療の選択を任されることも多くなってきた。とはいえ、医学について素人の患者が医師に質問したり、自分に合う治療法を選び取ったりすることはなかなか難しい。

 

 そんなとき、病院ではソーシャルワーカーやがん看護専門看護師に相談できるが、実は、病院外にも「医療コーディネーター」という職業の人がいる。医療コーディネーターとはで医療の知識を持つ第三者として医師と患者の立場の違いから生まれる考え方の隙間を埋めながら、患者が希望する治療や医療を受けられるようにサポートしてくれる人のこと。つまり、患者とその家族や友人の専属アドバイザーだ。

 

 医療法で医師は治療前にその内容や予想される副作用、治癒率、予後などを話して、患者の合意を得るというインフォームドコンセントが義務づけられて医師はずいぶん言葉を選びながら患者と話すようになってきた。が、それでも患者が理解できないことは多い。そんなときはコーディネーターが診察に同席して、患者の表情を見ながら「先生、その言葉の意味がちょっとわからないのですが」「すみません。もう一度、かみくだいてお話しいただけますか」などと声をかけたり、補足説明したりする。

 

 医療コーディネーターの嵯峨崎さんはいう。

 

 「患者が医師の話についてわからないのは当然だと思います。大学で6年間も医学の基礎を勉強して、さらに臨床現場で知識や情報を積みあげてきた人と話して、I回の説明ですべてをわかろう、わかってほしいというほうが無理ですね。最初の説明で患者さんが理解できることは5%ぐらい、残りの95%は何回も説明を聞くうちにわかってくるものでしょう」

 

 複数の治療法が提示され、患者がどのように決めればよいかわからない場合は、医療コーディネーターが患者の人生でどんなことが一番大切か、いまどんな生活をしているか聞き取り、その入らしい生き方にそった選択肢を話し合う。

 

 主治医とうまく信頼関係を築けず病院を替えたいという人には、こうしたらいいのではないかと関係修復の提案もする。相談者のなかには「医師は強い立場でお金をたくさん稼いでいる。一方、患者は悲惨な状況にある」と被害者的な意識を持っている人もい・・・(省略)

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円