社会人経験のある管理栄養士が増加

 林さんが管理栄養土を目指したのは高校時代だった。て栄養指導を受けていたことからだ。林さんの母親は、いつも「病院の栄養士さんというのは、素晴らしい仕事ね」とほめていたという。大学では理系を専攻していたが、「女性は手に職が必要」と言われて育ったため、当時、大変難しい仕事とされていた、管理栄養土の資格を卒業と同時に取得した。

 

 最初に勤めた大阪医科大学附属病院(高槻市)では、栄養士の仕事を一人で数人分こなし、「調理場の鍋の前でブウブウ言いながら料理をつくっていたこともあった」と振り返る。その後、長女が幼いころよく通院していた淀川キリスト教病院と縁ができ転勤してからは、ホスピスの理念「患者は最期に何をしてもらいたいか。私たちは何をしてあ・げられるか」を、生活の基本である食事でどうかなえられるか追求してきた。

 

 だが、患者が望んでも病院では難しいこともある。

 

 「我が家の味が食べたい」という男性には、いつも妻が食事を病院に持ってきた。ある日、患者から「妻を休ませてあげたい。食事のつくり方を習ってくれないか」と頼まれ、林さんはいろいろ考えた。が、この願いをかなえることは難しいと感じた。このとき、自分の什事には限界があると気づいた。

 

 「たとえ、私か有様に習って同じ素材と手順でっくったとしても、長年培ってきた手料理の微妙なおいしさを出せるわけではありません。患者さんにとって一番のクスリは、『おいしいと思えるものを食べられること』とわかりました」

 

 後進の指導にも積極的に携わる。この病院では、管理栄養十の資格取得を目指す学生の臨床研修を受け入れる。最近、社会人になってから管理栄養十を目指す人が増えているそうだ。学生と異なり、社会経験のある人は目的意識がはっきりしていて、精力的に勉強していくという。この仕事に向いている人はどんな人か。林さんは3点あげた。

 

①食べ物の好き嫌いのない人(献立に偏りが出る可能性が高い)

  • 食べ物に興味がある人
  • 栄養全体を広い視野で、貪欲に勉強できる人

林さん白身、食べることが好きで、週末に家族と街を歩いても新しい食品や流行りのメニュー、どんな物を注文しているかなど、いつのまにかチェックしているという。「とにかくこの仕事に就きたい人は、自分で食べて、おいしいと思える感覚を養ってほしいですね。また、面接で『私はホスピスの栄養士になりたい』と言う人がいますが、ホスピスは病院の栄養管現業務の一つ仁過ぎません。患者さんの栄養について全般的に幅広く知識を身につける姿勢で臨んでほしいです」

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円