『もう、部屋に来ないでくれ』と言われたら仕方ありません。そうでなければ、必ず約束通り部屋に行き、『私はあなたのリハビリを手伝うことができます。必ず力になりますよ』とメッセージを送っています」 発音訓練は、開始からすぐ改善したと実感できるわけではない。自分でわかるようになるのは、毎週1回40分の訓練を受け続け七場合、早い人でも1ヵ月かかるという。患者は同じ訓練をゴツゴツ続けて、熊倉さんは懇切丁寧にその発音を評価する。

 

 「言語聴覚士が歩く方向や距離、必要な時間を示しますから、目的地のオアシスは、きちんと見えているんです。そこを目指して、言語聴覚士は患者さんと一緒に歩いていきます」

 

 たとえ訓練の結果、オアシスにたどりつかなくても、一緒に歩いたことが大切になる

 

 なお、喉頭がんで喉頭を摘出すると、声を出す機能が失われる。この場合、①小型のマイクのような器械をのどに当てて声を出す方法(人工喉頭)、②喉頭の代わりに食道の粘膜を震わせて音を出す方法(食道発声)などがある。人工喉頭の使い方は言語聴覚士が教えることもあるが、食道発声は患者会が中心になって指導している。