メイクには人を元気にする力がある

 近年、東京女子医科大学附属女性生涯健康センターや日本医科大学付属病院(形成外科・美容外科、文京区)に「リハビリメイク外来が設置されている。リハビリメイクとは、ケガや病気によって顔や体にトラブルを持つ人が、それらをメイクでカバーし目立たないようにする技術のこと。生活の満足度を高め、素顔の自分を受け入れ、社会に踏み出すためのサポートを目指す。フェイシヤルセラピストのかづきれいこさんが自分の経験や苦しみからメイク法を考案し、流行に惑わされず、その人に必要なメイ犬が何十年でも続けられるように化粧品や道具も開発した。リハビリメイクの施術者は「フェイシヤルセラピスト」と呼ばれる。

 

 イギリスを中心とした欧米の医療施設でも、あざや傷あとをカモフラージュ(患部を目立たないように隠す)する「メディカルーメイクアップ」という考え方を取り入れている。が、かづきさんはメイクを「患部や悩みを隠すため」でなく、「自分の素顔を受け入れるための手段」として提案する。

 

 メイクには人を元気にする力がある。かづきさんはそう確信している。

 

 『たとえば、「顔が気になる日は心がつらい』『心が暗いと体がしんどい』という経験はありませんか。自分の顔のあざや傷あとを好きになれなければ、生きるのがつらくなってしまいます。でも、リハビリメイクで悩みから解放されれば、心が癒され笑顔がこぼれる。体が軽くなって『ちょっと、おしやれしてみたい』『どこかへ行きたい』『人に会おうかな』と自然に思えます。顔と心と体は深くつながっているからですね」

 

 リハビリメイクでは、最初はあざや傷などを完璧にカバーし、目や眉などの個々のチャームポイントを強調する。顔が自分のイメージに近づいて気持ちが前向きになれば、メイクを薄くする。やがて、自分の悩みを受け入れられると素顔が気にならなくなる。

 

 かづきさんはそのテクニックを指導する。

 

 「メイクできれいになって喜びを感じたら、薬を飲むことと同じぐらいか、それ以上に元気が出ます。でも、フェイシャルセラピストが自分流のおしやれメイクを押し付けても、鏡を見た瞬間、本人が『なんか、イヤだわ』と思えば、気持ちが余計落ち込んでしまう。つまり、納得できる外観を自分でつくれるよう、技術を身につけなければならないわけです」