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錠剤の交付
患者に錠剤を交付する形態は,患者の用法の理解度にその基準を求めなければならない.調剤の形態は用法指示や交付時の服薬指導のあり方に大きく関係する.近年は持続性製剤の進歩により1日の服用回数が少ない薬剤が増えた結果,服用回数が異なる薬斉11が混在して処方される例が増えている.それぞれの錠剤をいくつ,いつ服用するのか,明確に患者へ指示されなければならない.学童や高齢者など,口頭による説明が不十分と考えられる場合は,さらに服薬指導書を添イ寸することもー一一・方法である.
①錠剤の色・形・包装形態がそれぞれ異なっていて,患者が容易に識別で
きる場合に,一つの袋に内袋を使わないで直接入れて,錠剤の色・形・
包装形態によって薬袋に服用方法を指示する.
②同系色,大きさ,形状あるいは包装形態が類似しており,患者が個々の
製剤の判別が簡単にできない場合には,それぞれ内袋に入れて内袋に用
法指示をし,さらに薬袋にまとめて服用方法を記載する.
③病院における入院調剤,あるいは高齢者に対する投薬などで薬の種類が
多くて一回の服用量を患者自身でセットすることがむずかしく,正しい
服薬ができないと考えられる場合には,一回ごとの
用量に分割分包する方法(一回量包装, One dose one package system)
を採用する.しかし,本来的には,インフォームドコンセントに基づい
た情報の公開の原則から考えれば,どの錠剤を何のために服用するのか,
それぞれに理解できるように交付することがのぞましい.
④バッカル・舌下錠,さらにそしゃく錠などは,用法が他の錠剤と異なる
ため,同一に処方されていたとしても別の薬袋に分けて服用方法を指示
す
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錠剤の計数
薬袋を確認した後,処方せんの錠剤の品名と単位と錠剤棚の品名と単位が同じであることを確認して,必要数量の錠剤をとり,トレイなどに集めて,再確認しながら内袋へ入れる.この場合, PTPやSPの形態や色が似ているものが混在する可能性があるので,全部の包装面の記号やコード,デザインを確認することが大切である.
錠剤と散剤が混在した処方すなわち錠付き散剤の訓剤においても,錠剤は内袋に入れて分包された散剤とともに薬袋へ入れる.包装されていないバラ錠の場合も同様な取り扱い方法で,適当な容器または袋へまとめたものを,内袋へ入れる.
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薬袋作成
調剤の第一段階は薬袋の作成であるが,錠剤調剤の場合は通常PTPやSPのまま調剤されるので,多種類の錠剤が処方されている場合は,薬袋のほかに個々の錠剤を内袋に入れ,個々の錠剤の用法をわかりやすくそれぞれの内袋に記載する方法が一般的である
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処方せん監査
処方せん監査は,患者に対して正しい調剤ができるかどうかを調査する行為であるから,調剤計画と処方せん監査が表裏一一一体にある.調剤上の留意すべき事項の確認でもある.
①散剤の中へ錠剤を直接入れて分包することがのぞましい.
②一般用医薬品(OTC薬)の場合,カプセル剤および直径6mmを超える
錠剤・丸剤は5歳未満の乳幼児には与えない.また3歳未満の幼小児に
は錠剤・カプセル剤の投与は考えられていない.この考え方は調剤の場
合においても剤形選択のひとつの目安となり,処方医と協議することが
好ましい.
③剤形が錠剤しかない薬剤を小児へ投与する場合や,入院患者などで,
チューブを通す経鼻腔投与など,患者の状態によって調剤方法を考慮し
なければならない場合などは,製剤の粉砕もやむをえない.
このような場合を除き,徐放性製剤のつぶしは製剤設計上,原則的に避
けるべきである.これらの製剤をつぶしたときは,薬物の生体内挙動が
変わることを十分に考慮しておかなければならない.
④PTPなどは,包装自体が気密容器を構成して,保存,汚染防止などの効
果を有するため,入院調剤や高齢者,精神科領域の患者に対して一回量
調剤を行う場合を除き,包装されている錠剤はそのままの状態で調剤す
ることが好ましい.揮発性の二lヽログリセリン錠やビタミンK斉|りなどは
ピートシール包装に保存としや光効果が認められる好例である.また最
近,白色系の錠剤が多くなっている.識別コードが錠剤表面に刻印され
てはいるか小さく,判別するのが容易ではない.しかし包装のデザイン
によって薬剤の識別ができることは患者にとっても服薬上の大きな利点
である.
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錠剤の調剤
錠剤(カプセル剤を含めて)による調剤は,他の製剤と比べて簡便に行えるが,処方監査から始まって,注意事項を遵守した正確な調剤,調剤鑑査を経て,さらに交付時の服薬方法,適用方法など患者への十分な注意一指導を行わなければならないことに変わりはない.特に調剤される錠剤の種類が多い場合などは,患者に服薬過誤を誘発させないように,理解しやすい交付の方法をとるように努めなければならない.また同じ処方内容であっても調剤の方法や服薬の指示が交付毎に異なるようなことは,いたずらに児者に不安を与え,薬剤師と患者の信頼関係を損なうことにもなりかねないので避けねばならない.薬歴簿の作成は過去の投薬状況を確認することができ,このような事態を避けるためにも有用な謌剤行為である.
(1)処方せん監査
近年,医薬品の品目数が増加するとともに,薬剤の品名が類似していたり,持続性錠剤など製剤設計を異にしたもので品名の語尾に-Rや-Lをつけた医薬品が増えている.処方せんを読むときには,これら類似薬剤名を誤認する危険性を十分考慮して調剤の正確性を期さなくてはならない.次に,処方薬剤が配合剤である場合は,含有薬物量の総量から処方薬剤の1日の分量あるいは用量が適切であるかどうかの判断をしなければならない.錠剤などの固形製剤では,投与量の調節ができるように同一の品名で2種類あるいはそれ以上の含有量が異なる製剤がある場合が多い.このような錠剤で処方せんに含有量が明示されていない場合は,照会して確かめた後でなければ調剤はできない.
保険調剤では含有量の違いにより効能・効果が違う場合もあるので照会時にはこの点についても考慮する.また処方されている錠剤の分量が1日の服用回数で割り切れない場合もある.この場合は,処方医へ照会することが原則である.
一般的に,錠剤が指示された用法に均等に分服できない場合の用法指示は,抗生物質などの化学療法剤,あるいは痛風,重症筋無力症などの治療薬では,なるべく血中濃度の維持を考慮して行われる.
それぞれの薬剤の特性による錠剤の分量配分方法を知っていることは,処方せん監査と服薬指導を行ううえできわめて重要である.
嚥下能力のない乳幼児の場合には,錠剤による投与は避けることが好ましい.また,幼小児や高齢者の場合も錠剤を服用しにくい患者がいるので注意を要するがに介助者を必要とするような高齢者の場合は,散剤や顆粒剤よりも錠剤のほうが服用させやすい場合がある.生活の環境を含めて患者の状態についての情報を服薬指導時に少しでも多く収集することは,よりよい服薬状況をつくるための決め手ともなる.
徐放性(経口)製剤の評価
現在,持続性錠剤に代表される徐放性(経口)製剤の開発は,厚生省によってまとめられたガイドラインによって進められる.徐放性製剤を製造するにあたって対象となる薬物については十分な調査をする必要があり,またその評価,投与時の問題について検討することとされている.患者サイドに立つ薬剤師にとっても,これらの検討は病院製剤の開発,あるいは徐放性製剤の理解と評価に役立ち,医師の薬物投与計画への情報提供,処方せん監査,あるいは服薬指導の貴重な情報を得るー一助となる.
(1)徐放化の際に検討を要する薬物特性
O消失半減期:毒性発現の防止や投与量低減などを除いて,消失半減期
の長い薬物の徐放化け好ましくない.
ii)初回通過効果:初回通過効果の大きい薬物では放出,速度を遅くする
と,バイオアベイラビリティが著しく低下するおそれがあるもの.
iii)吸収部位:吸収部位が限定されている薬物では,通常の徐放化で吸収
率が低下するおそれがあるもの.
副作用:副作用への影響として次の検討を行うことが望ましい.①血
中あるいは作用部位濃度と臨床効果との関連性,②薬物血中濃度維持
による酵素誘導,阻害,薬効の変化,耐性あるいは依存性の発現,③
蛋自結合性に関連した他の薬物との相互作用.
(2)徐放化の価値の評価
O薬物の放出特性:消化管内で製剤に慟く機械的変動を考慮して,異な
るpHおよびかくはん条件下での溶出試験によって検討される.
勧薬物速度論的特性:血中濃度一時間曲線下面積,最高血中濃度,最低
有効濃度維持時間などの比較のほか,食事および食事時問(空腹時,
食後)などの影響を評価することが重要である.
iii)臨床効果:徐敖性製剤が確実に機能を果たしているとしても,そのま
ま臨床上の利点につながらないので,血中薬物濃度と薬理効果の関係
を臨床的に明確にしておかなければならない.
以上.,述べたような徐放性製剤の特性を評仙すると共にその有舒|生を検討することが求められる.その有舒ド|ミの判断基準としては次のようなことが考えられている.
①速放性製剤と比較するとき,最低有効血中濃度維持時間が少なくとも1.5
倍以上に増大するか,または投与回数を2/3以下としても迪放性製剤と同
等以上の薬効を示しているか.
②速放性製剤あるいは他の徐放性製剤と比較するとき,投与回数が同じで
あっても,有意に副作用を減少させることができ,かつ対照製剤と[司等
以上の薬効を小しているか.
③該当する速放性製剤がない場合には,原薬の水溶液または試作した速放
性製剤を対照として当該製剤の放出特性,薬物速度論的特性等を検討し,
上記①または②に準拠して判断する.
(3)徐放性製剤の投与指針
徐放性製剤は通常の製剤に比べ,薬物の1回の投与量が多く,長時間にわたる吸収を設計しているため,過剰投与の場合や患者が製剤をかみ砕いてしまった時などの薬物の過量放出(Dose dumping)による重篤な副作用や,中毒の危険性があり,その場合の対処法をあらかじめ検討しておくことも大切である.
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溶出試験
内用固形製剤からの主成分の溶出を試験するものである.内用固形製剤の品質を一定水準に確保し,併せて著しい生物学的非同等性を防ぐことを1日的とするものである.
試験の方法は,第1法(回転バスヶツト法)と第2法レマドル法),第3法ツロースルーセル法)の3種類があり,個々の医薬品ごとに定められた試験液を用いてそれぞれ規定の時問内に含有薬物が溶出することを試験する.例えばジギトキシン錠の場合,溶出試験法は第1法を用い,脱気した37での溶出液(希塩酸3mLを水に加えて500 mL としたい内で毎分100回転でバスケットを回転させる.この条件で溶出試験を行った場合,30分後の溶出,率60%以上,60分後で85%以上であれば,本剤の溶出試験は適合であると定められている.第3法は,下端が円垂の筒状セル,定流量ポンプ,試験液の貯槽,送液チューブ及び恒温槽からなる装置を用いて行うもので,セルより流出して受器に集められた試験液を採取,定量して溶出率を求める方法である.