崩壊試験

 

 補助盤を用いて30分間,剤皮を施した錠剤の場合には同様に60分間上下運動を行った後,観察するとき,錠剤の残留物をガラス管内に認めないか,又は認めても海綿状の物質であるか,若しくは軟質の物質若しくは泥状の物質がわずかのときは適合とする.錠剤6個をとってこの試験を繰り返す.再試験において前記と同様な結果が得られた時は,適合と認められる.

 

 腸溶性剤皮を施しか錠剤の場合には,試験液にpH約1.2に調節された第1液で120分間上下運動を行って錠剤が崩壊しないことを確かめる.さらに新たな試料6個をとってpH約6.8に調節された第2液を用いて補助盤を入れ,60分間上下運動を行って,上に述べた判定の基準にしたがって適否を判断する.

 

 錠剤によって試験中に補助盤に什着し,判定に支障をきたす場合もある.このように判定が困難なときは補助盤の使用を省略することができる.

 

 舌下錠ニトログリセリン錠,硝酸イソソルビド錠)については,崩壊時間は別に2分と規定されている.また次に述べる溶出試験の適用を受けるもの(ジギトキシン錠,ジゴキシン錠,プレドニゾロン錠など)は崩壊試験の適用が除外されている.またトローチ剤も本試験は適用されない.

嚥下機能もリハビリと工夫でよくなる

 囗腔がん(おもに舌がん)、中咽頭がん、下咽頭がんの舌や咽頭部の切除後、放射線治療後では、摂食・嚥下機能が低下する。摂食というのは、食べ物を目で見て認知して、どうやって、どのくらい食べるか判断すること。嚥下とは、咀嚼した食べ物をのどから胃に飲み込むことを指す。どうして不自山になるのだろうか。

 

 「ふつうは、食べ物を臼歯に置いて、頬と舌の力でまんべんなく噛みつぶしています。が、切除や放射線治療で舌が小さくなると動きに制限ができ、筋力も低下するので咀嚼が難しくなるものです。たとえなんとか犒み砕くことができても飲み込むための塊をうまくつくれなくなったり、それを喉の奥へ運んだりするのが難しくなります」

 

 だが、これも発話機能と同じように、リハビリで取り戻すことができる。

 

 熊倉さんは、こんな例を紹介してくれた。

 

 公認会計士だった男性Dさん(70)は、舌根にがんができて「中咽頭がん」と診断された。当時、すでにがんが進行していたので、放射線治療の適応にならず、手術で舌を亜全摘が、後遺症として発話と嚥下の障害が残ったの

で、担当医の紹介で熊倉さんのリハビリを受けることになった。

 

 術後2ヵ月の初診のとき、Dさんは鼻から胃までチューブを入れて流動食の形で栄養を摂っていた。会話は筆談だった。熊倉さんがDさんの舌をよく診たところ、検査の結果によっては栄養チューブを外せるのではないかと考えた。そこで、嚥下機能の検査をした。「ビデオ嚥下造影検査」で液体やゼリーなどを飲み込む様子をレントゲン造影しかところノ誤嚥のないことがわかり、その場で鼻に装着していたチューブを外すことができた。帰り際に、Dさんは言った。

 

 「本当にうれしいですね。先牛にお会いしなかったら、一生このままの姿でした」

 

 それまでは見た目を気にして、人に会うことを避けていたという。

 

 さらに、Dさんは食べ物の咀嚼や飲み込むための訓練も始めた。

 

 たとえば、口腔内、のど、食道までの一連の動きを強化するために、飲み込むときの塊をつくる(舌を前後・左右に動かす)、そしてそのときの姿勢を練習した。

 

 実際の食事時間を使って訓練することもある。その場合は食べるときの姿勢や食べる量などを工夫していく。たとえば、Dさんの場合はかせることなく飲み込めるよう、右半身を横向きに倒すなど姿勢を変えたり、スプーンやシリンダ(注射器の針を取り除いたもの)で食、べ物を舌の奥に乗せたりするなど、いろいろ試してみた。食材の形を「きざみ食にするか」「ペースト食にするか」など決めるため、食べ物の咀嚼能力を分析したところ、柔らかいものなら誤嚥することなく食べられるとわかった。

 

 約1年後、Dさんは「当たり前のように思っていた食べることや飲むことができなくなるのはとてもつらい経験でした。でも、訓練を続けた結果、好きなお酒が飲めて焼き肉を食づられたときには本当に涙が出ました」と話していた。

 

 患者が言語聴覚士と接するのは、術後、しばらく経ってからのことが多いそうだ。が、医師の判断で、術前に言語聴覚士も一緒に面接し、訓練の内容を説明することもある。そのほうが不安を軽減させることができるという。摂食・嚥下機能も発話機能の訓練と同じように、障害が軽くなったことを実感するまで、本当に地道なプロセスを踏む。「話す」「食べる」は生活の基本なので、患者はできるようになると「ああ、よかった」と安堵する気持ちのほうが強いそうだ。が、本当はそれこそが日常生活の満足度や人生の充実にもつながる。

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

 

『もう、部屋に来ないでくれ』と言われたら仕方ありません。そうでなければ、必ず約束通り部屋に行き、『私はあなたのリハビリを手伝うことができます。必ず力になりますよ』とメッセージを送っています」 発音訓練は、開始からすぐ改善したと実感できるわけではない。自分でわかるようになるのは、毎週1回40分の訓練を受け続け七場合、早い人でも1ヵ月かかるという。患者は同じ訓練をゴツゴツ続けて、熊倉さんは懇切丁寧にその発音を評価する。

 

 「言語聴覚士が歩く方向や距離、必要な時間を示しますから、目的地のオアシスは、きちんと見えているんです。そこを目指して、言語聴覚士は患者さんと一緒に歩いていきます」

 

 たとえ訓練の結果、オアシスにたどりつかなくても、一緒に歩いたことが大切になる

 

 なお、喉頭がんで喉頭を摘出すると、声を出す機能が失われる。この場合、①小型のマイクのような器械をのどに当てて声を出す方法(人工喉頭)、②喉頭の代わりに食道の粘膜を震わせて音を出す方法(食道発声)などがある。人工喉頭の使い方は言語聴覚士が教えることもあるが、食道発声は患者会が中心になって指導している。

不明瞭な発音はリハビリで改善できる

 「新聞、取って」

 

 生活の中のそんな何気ない言葉が、もし突然、うまく発音できなくなったら……。

 

 言語聴覚士の熊倉勇美さんは言う。

 

 「コミュニケーションの手段には、言葉を話すほかにも筆談、ジェスチャー、指差し、目で合図するなどがありますが、どの方法でも思い通りに意思を伝えることは難しい。自分の気持ちをうまく表現できないということは、非常にストレスを感じるものです」

 

 囗腔がん(舌、口腔底、歯肉で硬口蓋、頬粘膜などにできるがん)や中咽頭がん(囗の奥にある軟口蓋、扁桃、舌根などにできるがん)では、手術で舌の一部、下あご、軟口蓋(上あごの奥のやわらかい部分など)を切除することかおり、切除する場所や範囲によっては発音に障害が残る。放射線治療後も、照射した部分に炎症や痛み、むくみが起こったり、唾液腺や舌が萎縮したりするなどして同じような後遺症を残すことがある。

 

 「しかし、失われた機能があっても、残された能力を訓練で引き出せば、日常生活の不自由さを軽くすることはできます」

 

 言語聴覚士は患者の発音を丁寧にチェックして、どうしたら解決できるか専門的にアドバイスしてくれる。

 

 どのようにリ(ビリするのか。熊倉さんから発音訓練の例を紹介してもらった。

 

 20代の学生A子さんは5年前、舌の表面に小豆大の白斑ができた。痛みがなかったので放置していたが、辛味や酸味のある食事をすると、しみるような感じがした。歯の治療のとき歯科医に相談したら、「口内炎でしょう」と言われて塗り薬をもらったが数力月経っても、それは治らなかった。

 半年後のある日、白い腫れが舌の側面や舌先まで広かっていることに気づいた。すぐに大学病院の耳鼻咽喉科で診てもらい、詳しい検査を受けたところ、「2センチの舌がん」と診断された。早期の場合、放射線療法の一種の小線源治療(放射線発生源を密封しか針を病巣部に刺す治療を受けることができれば発音障害は残らない。A子さんもその治療を希望したが小線源治療ができる医師が地元で見つからず、主治医と相談して舌の一部を部分切除した。

 

 退院後、発話機能に後遺症が残った。A子さんがはっきり言葉を発音できないので、相手は十分聞き取れない。まるで、飴玉を頬張っているような話し方になってしまう。A子さんには「英語を習得して、外資系企業で働きたい」という希望がめったため思い悩み、手術した病院で相談した。が、主治医は「大丈夫です。十分コミュニケーションは取れていますよ」と言うばかりで、アドバイスはなかった。

 

 A子さんがインターネットでいろいろ調べたところ二言語聴覚士が術後の発音を矯正してくれることを知り、熊倉さんを訪ねた。初診で熊倉さんはA子さんの悩みや困っていることを聞き、さらに、分析したところ、とくに、ダ行の発音がサ行やハ行に聞こえて、うまく伝わらないことがわかった。しかし、

 

 「舌の部分切除の場合は、数力月訓練すれば、はぼ100%よくなりますよ」

 

 という熊倉さんの一言でA子さんは希望を持つことができ、片道1時間かけて、週1同40分間のリハビリに通うことになった。

 

 毎回の訓練では鏡を見ながら、舌、くちびる、あごを前後・左右・上下に動かし、うまく発音できたときのスピードや位置を確認して覚えた。テープに声を録音して聞きながら練習した。さらに、会話中、自然仁舌を動かせるように「たまご」「あたま」と、単譜のどの位置に夕行がきても言えるよう、何度も繰り返した。

 

 その結果、A子さんは半年後に発音の障害を完全に克服でき、いまは念願の外資系企業で働いている。

 

社会人経験のある管理栄養士が増加

 林さんが管理栄養土を目指したのは高校時代だった。て栄養指導を受けていたことからだ。林さんの母親は、いつも「病院の栄養士さんというのは、素晴らしい仕事ね」とほめていたという。大学では理系を専攻していたが、「女性は手に職が必要」と言われて育ったため、当時、大変難しい仕事とされていた、管理栄養土の資格を卒業と同時に取得した。

 

 最初に勤めた大阪医科大学附属病院(高槻市)では、栄養士の仕事を一人で数人分こなし、「調理場の鍋の前でブウブウ言いながら料理をつくっていたこともあった」と振り返る。その後、長女が幼いころよく通院していた淀川キリスト教病院と縁ができ転勤してからは、ホスピスの理念「患者は最期に何をしてもらいたいか。私たちは何をしてあ・げられるか」を、生活の基本である食事でどうかなえられるか追求してきた。

 

 だが、患者が望んでも病院では難しいこともある。

 

 「我が家の味が食べたい」という男性には、いつも妻が食事を病院に持ってきた。ある日、患者から「妻を休ませてあげたい。食事のつくり方を習ってくれないか」と頼まれ、林さんはいろいろ考えた。が、この願いをかなえることは難しいと感じた。このとき、自分の什事には限界があると気づいた。

 

 「たとえ、私か有様に習って同じ素材と手順でっくったとしても、長年培ってきた手料理の微妙なおいしさを出せるわけではありません。患者さんにとって一番のクスリは、『おいしいと思えるものを食べられること』とわかりました」

 

 後進の指導にも積極的に携わる。この病院では、管理栄養十の資格取得を目指す学生の臨床研修を受け入れる。最近、社会人になってから管理栄養十を目指す人が増えているそうだ。学生と異なり、社会経験のある人は目的意識がはっきりしていて、精力的に勉強していくという。この仕事に向いている人はどんな人か。林さんは3点あげた。

 

①食べ物の好き嫌いのない人(献立に偏りが出る可能性が高い)

  • 食べ物に興味がある人
  • 栄養全体を広い視野で、貪欲に勉強できる人

林さん白身、食べることが好きで、週末に家族と街を歩いても新しい食品や流行りのメニュー、どんな物を注文しているかなど、いつのまにかチェックしているという。「とにかくこの仕事に就きたい人は、自分で食べて、おいしいと思える感覚を養ってほしいですね。また、面接で『私はホスピスの栄養士になりたい』と言う人がいますが、ホスピスは病院の栄養管現業務の一つ仁過ぎません。患者さんの栄養について全般的に幅広く知識を身につける姿勢で臨んでほしいです」

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

退院後の食事のアドバイス

 管理栄養士は退院後の日常の食事や栄養管理について、患者や家族に指導することもある。とくに、「退院後の食事のつくり方」を教えてほしいと質問されることは多い。病院のような食事は手間がかかってとてもできないと思いがちだが、林さんは「大丈夫です。工夫すれば家庭でもつくれます」と言う。

 

 たとえば、一番よく聞かれるとろみ食については、▽りんごのすりおろしなどを含めて離乳食を使うと簡単、▽魚をすりつぶすと臭みが出るので、はんぺんをミキサーにかけるといい、▽ケチャップは香辛料が強いのでトマトピューレを使う、などアドバイスする。さらに、相談を多く受けるという症状別の食事をアドバイスしてもらった。

 

  • 食欲不振の場合

 ・のどごしのよい麺類(冷麺・あたたかいそうめん、そばブフどん)やあっさりした和食などシンプルな献立が好まれる。

 ・温泉卵(のどごしがいいので、卵豆腐より人気)、冷ややっこ、スープ類(ポタージュ、コンソメ、野菜入りスープなど)も食、べやすい。

 ・果物・ゼリー・アイスクリームなど、甘いものは人気。

 ・少量で栄養がとれる経口の濃厚流動食(商品名テルミールやブイークいス匸ノイッカルー

 プラスなど)もお勧め。病院の売店やインターネットなどで購入できる。

 なお、栄養素の中でも、亜鉛不足は味覚異常を起こし食欲の低下につながる。

口内炎がある場合

 ・固い食べ物は避ける。たとえば、肉類はホワイトシチューなどをつくって柔らかく

 煮てしまう。ただし、カレーや辛子など刺激になる味付けは適さない。

 ・魚類は煮魚、焼き魚、魚すきが好まれる。ただし、ボン酢は避ける。

 ・酢の物や味の濃いもの、辛いものは避ける。薄味が好まれる。

 ・果物では、みかんやグレープフルーツなど酸味の強い柑橘類、熟したメロン、パイ

 ナップルなどは刺激が強いので避ける。フルーツゼリーなどが食べやすい。

 ・なめらかな卵豆腐、温泉卵、そうめん類などは好まれる。

 なお、食事の温度は熱すぎるものも冷たすぎるものも避ける。常温が食べやすい。

③嘔吐・吐き気がある場合(化学療法の副作用によって起こりやすい)

 こ薄味や冷たくて囗当たりの良い食べ物が好まれる。たとえば、プリン、ヨーダ

 ト、温泉卵、冷やしそうめん、果物、ジュース、フルーツゼリー、シャーベットなど。

 ・1品の食事量を2分のI、3分の1に減らして、食器も小さいものに盛りつけると

 満足感が得られる。少しずつ品数が多い方が食べ物を選ぶ楽しみも加わる。

 ・においの強いもの(納豆、ニンニクド不ギなど)は避ける。

 ・水分の多いもの、一口大の氷片なども吐き気を抑える効果がある。

 において吐き気が起こりやすいため、火を通しかものは常温で食卓に載せるとよい。

④味覚異常のある場合(化学療法や放射線療法による副作用によって起こりやすい)

 ・塩味を苦く感じる場合は醤油や塩分を控えて、だしや酢、風味(ゆずやごま油)など

 の素材を生かした献立にするとよい。

 ・甘味を感じやすいときは砂糖やみりんなどを使った煮物は避けて、お浸しやサラダ

 などを。酢の物はポン酢などを利用するとよい。

  なお、味覚異常のときは味の濃い食べ物が好まれる。たとえば、お好み焼き、たこ

 焼き、焼きそば、菓子パンなど。味噌汁やスープなどで味を濃くするのもよい。冷や

 しそうめん、アイスクリームも人気。

⑤腸閉塞のおそれがあるとき

 ・食物繊維の少ない食品(ヨーグルトも好まれる)や、少量で栄養のある濃厚流動食を

 活用するとよい。

 このほか、患者は体調の良いときに食べたい物だけをほしがることが多い。その工夫

として、次のようにアドバイスする。

 「プリンやシャーベット、アイスクリームなどを冷蔵庫や冷凍庫に常備しておくとよい

でしょう。料理はレトルト食品などを利用して、上手に組み合せると便利です。さら

に、患者さんは部屋に閉じこもりがちになるので、気分を変えるためお弁当を持って外

に散歩に出ることもお勧めします」

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円

患者給食の個別対応が実現できるわけ

 病棟勤務の管理栄養士8人は、給食の献立づくり、毎日の食事内容の管理、食材の発注、調乳(新生児向けミルクづくり)、各病棟への配膳、入院患者や外来患者の栄養指導な

ど、毎日大奮闘している。

 

 患者給食は一般病棟とホスピス病棟(23床)合わせて約450食(全607床二分を朝昼晩の3回用意する。一般病棟の患者に対しても献立づくりの内容はきめ細かい。患者給食は一般食と特別治療食に大別され、さらに、年齢別、男女別に摂取量が異なる。一般食のなかでも、患者の容態別に6区分され、ご飯やおかずの柔らかさ(常食、全粥食、5分粥食、5分キザミ食など)が24種類ある。特別治療食では、病気別に23の区分53種類に細分化されている。患者の容態によっては、(1食分の盛り付け量を半分にする)を用意する。

 

 これらの1日1000食を超える食事内容が食事箋という指示書に書き込まれ、毎日、調理場に回される。患者のなかには食材によってアレルギーが出たり、食べてはいけない形状があったりするため細心の注意を払う。

 

 食材には季節感を取り入れる。外出が思い通りにならない患者のために、春になったらタケノコ、夏は(モやアユ、秋はサンマやマツタケ、冬はカブやクリスマスのチキンなど、少し季節を先取りしてお皿に盛りつける。見た目で食欲がわくように、彩りにも気を使う。毎年、2月の節分には恵方巻き(太巻き)、3月のひな祭りにはちらし寿司、5月の端午の節句にはお子様ランチなど、行事に合わせた食事も用意する。

 

 これだけ細かく個別対応できるのは、給食に「直営方式」を導入しているからだ。管理栄養士だけでなく、食事に関わるスタッフは調理師も洗い場も、すべて病院職員として採用されている。2007年現在、本館・別館2棟のそれぞれに調理場が設置され、2棟分で調理師25人(調理助手を含む)、洗い場のスタッフが朝夕各8人が給食づくりに関わる。

 

 さらに、淀川キリスト教病院の場合、院内のどの部門も独立採算制を取っている。栄養管理課の食材費や人件費などの予算の使途、食材の入札権限や発注、人事の採用権などは管理職が権限をになう。イベントメニューの予算は、これまで国の補助金と通常の給食徴収費を少しやり繰りしながらI食あたり最大700円上乗せして予算を組む。

 

 だが、2006年4月からの健康保険法の改正で、国からの補助金(入院患者I人当たり200円)が廃止になった。さらにこれまでは1食でも1日分の給食費を患者から徴収できたが、1食分ずつ加算されるしくみになり、給食にかけられる総予算はますます厳しくなった。が、林さんは「ホスピスの理念を守るためにも、イベントメニューは続けます」と言う。

 

 一方、給食に「委託方式」を導入する医療機関も多い。委託方式は、①病院の給食施設にスタッフを派遣してもらうタイプ、②給食センターで調理された膳を配送してもらうタイプ、の2種類に大別される。患者給食を民間会社に委託している医療機関は、医療関連サービス振興会の全国調査(2003年)によると、令国で53・8%という。

 

 委託方式の場合は直営方式のような個別対応が難しいケースもある。

 

 ところで、②を導入している施設の場合、給食センターが献立までつくってしまうと、管理栄養士は「自分の力を発揮できない」と悩んでしまうという。林さんはそんな相談を受けたときはこうアドバイスしている。

 

 「対外的には、委託先に病院のケアの理念を話してその考えに沿った食事を出してもらうよう調整するという仕事があります。院内の仕事ではベッドサイドに訪問して、患者さんがどんなものが好きか、食べたいのか、食べられるのか探り当てたり、食欲が低下しているときは量を2分のI、3分の1に減らして、食べられたという満足感を得てもらったりするといい。仕事は考えれば考えるほど、アイデアが生まれますよ」

『がん闘病とコメディカル』福原麻希著より 定価780円