意欲がない

 

 何をする気も起こらない。この症状が、先にあげたような何も楽しくないという気持ち、悲観的な気持ちの結果として生まれているのか、それともそれとは関係なく意欲がないという症状が発生しているのかは、なかなか難しいところである。何も楽しくないから意欲も出ないのだろう、と普通は考えるが、病的な状態の時にそういう推測が本当に成り立つかどうか。楽しいとか楽しくないとか考える以前に、何もする気が起こらないと言われるうつ病の人もいるのである。

 

 症状の因果関係はともかく、人切なことは、意欲がないという症状があるという事実である。だから、何かやらせて元気づけようとしてもダメなのである。うつ病の人は、意欲が出ない一方で、何かしないと申し訳ないという気持ちを持っていることも多い。そこに、何かをやるようにというアドバイスをすることは、かえって追い討ちをかけることにもなりかねない。やはりここでも、普通の、自分の経験からのアドバイスは危険なのである。

擬態うつ病林公一著より